小浜の民家再生
福井県 戸建住宅 151平米~
この住まいは、落ち着いた住宅地の一角に計画されました。昭和中期に建てられた平屋の住まいの建替えです。緩い勾配の屋根が掛かる矩形平面の、こじんまりとしたこの既存住宅にお住まいの若いご夫婦は、建替えに際し、同じように平屋のイメージを保ち、しかしながら、それまでの小さな部屋に区切られた生活ではなく、区切りのない、水平に広がる住まいをお求めでした。ようやく立ち歩きを始めた男の子が安全にのびやかに遊べる室内、その子に何処からでも目の行き届く造り、それらを基本に計画がまとめられました。
敷地にL字型に配置された建物は、手前に個のゾーン、奥に共のゾーンが、テラス=外の居間を囲むように置かれ、その接点には、外のテラスに連続して屋内のテラスを設けています。
白く仕上られた共のゾーンは天井の高さと床の高さの違いで、居間/食堂/畳の間の場を緩やかにつくり、天井を高く設けた食堂の一角には落ち着いたロフトが設けられています。台所からはアプローチや外の居間の様子、そしてインナーテラスを通して個のゾーンまでもが一望に見渡せます。
食堂上部からつながるロフトを持つインナーテラスは、トップライトとハイサイドライトからの光が満ち溢れています。このインナーテラスはバスコートとしてそのまま浴室にもつながり、一体的で開放的なバスルームを形成しています。外の居間で過ごした親子が、インナーテラスを経て、バスルームで汗を流す、という情景もイメージしています。
しな合板と杉で仕上げられた個のゾーンは縦に2分割され、一方が吹抜の空間、他方は4人の家族を想定した4つの等質の個室が均等に並びます。眠るための最小限の大きさとされた個室は、大きな2段ベッドが並んでいるかのようです。そして全て引き戸で区画されるこのゾーンは、全ての間仕切りを取り払えば大きな一室です。吹抜のゾーンは家族構成とライフスタイルの変化に対応して、将来の増築スペースとなります。
黒く着色された外壁のモルタル壁は、左官職人が丁寧に櫛目を引き、手の痕跡を残しています。大きく開けられた上下の開口部の間には、亜鉛めっきの金属板が張られ、モルタル壁と対比をなしています。ハナミズキの街路樹と開放的な庭の植栽の緑が、黒い外壁にみずみずしく映えています。
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