家を建てる前に知っておきたい知識

傾斜地って安いけど―眺めの良さと建築費用の気になる関係5つ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
傾斜地建築

設計者:水谷嘉信さん

「眺めが良い傾斜地に家を建築したい」―そんなお考えの方もいらっしゃることでしょう。

自宅から夜景が楽しめる、夏には花火が見えるなど、お金では買えない感動を得ることができる場所、それが傾斜地の土地の醍醐味かもしれません。

ですが、逆に気になる点もあることは確か。

「地盤はどうなの?地震には耐えられる?」「斜面の土の流れを止める擁壁はどのように工事するの?値段はどのくらい?」

そうなんです。

平らな場所でないだけに、地震や雨による土の流れに対する備えが必要となる土地でもあるのです。

 

さて、眺めで気に入ったその土地、「本当に家は建てられるのでしょうか」。

ショッキングなフレーズで大変申し訳ありません。

というのも、やはり危険が伴う場所も実際にはあるからです。

家を建築するにあたり、やはり安全性は充分に確保したいものです。

念には念を、で考えなくてはなりません。

 

気にしなくてはならないポイントがいくつかあります。

 

傾斜地に建築しようと思ったとき、知っておきたい5要素

1.「急傾斜地崩壊危険区域」ではないか

これはもう、「危険ですよ」と明確に指定された場所の事。

気になる土地があるのならば、その周囲を少し歩いてみてください。

「急傾斜地崩壊危険区域」という看板があれば、その土地自体を見送るのが最善であるケースも。

その急傾斜地が危険と判断された場合は、国ないしは県が8~9割を負担し、残りを市や住民が負担して崩落対策工事を行います。

自分自身の家にかかることとはいえ、定期的な検査も入りますし、思わぬタイミングでの出費が発生することもあり得ます。

この「急傾斜地崩壊危険区域」での建築は、慎重になるべきです。

管轄の土木事務所(県などの自治体)に行くとどこにその「急傾斜地崩壊危険区域」があるかは教えてもらえます。

 

2.ひな壇型の宅地開発済みの土地の場合―「宅地造成法改正」後の造成かどうか

平成18年9月に、「宅地造成法」が改正されました。

阪神淡路大震災地震の際、急傾斜地のみならず、比較的緩やかな斜面での地滑りが多く確認されました。そのため、ひな壇型の宅地造成に関しては、法で厳しく管理する方向へ転換。

気に入った土地がひな壇型の宅地であったのなら、この「改正宅地造成法の仕様での造成ですか」と不動産屋など土地を扱っている会社に問い合わせてみるのも大事なことです。

 

3.傾斜地での建築で間違いなく必要なもの―「擁壁」

既に宅地用として造成されている土地であれば不要ですが、気に入った土地がただ単に切り開かれただけの本格的な造成前の状態でしたら、この「擁壁」の工事を考えなくてはなりません。

平らな土地を作るために、「切土」(坂の部分を削り取ること)をする必要があります。

またそれでも平らな部分が充分に確保できず、下部に「盛土」(土地の低いところに土を盛ること)をする必要がでてくるかもしれません。

 

これが傾斜地に住宅を建築するために欠かせない作業なのです。

この場合、切土部分にも盛土部分にも「擁壁」の設置が必要です。

斜面の崩壊を防ぐために避けては通れません。

ごく一般的な住宅用地1区画で数十万円から数百万かかると言われる擁壁。

通常は、現場にミキサー車が乗り込む「現場打ち」、もしくは「ブロック積」で作業をします。

費用だけでなく、建築にかかる工期にも影響を及ぼします。

一般的に言われているのは、「切土のほうが比較的安心」ということ。

切土で済む範囲内でしたらそうそう神経を使うこともないでしょう。

ですが、何分家の裏手に斜面があることには違いがありませんから、全くの心配なし、という訳にはいきません。

この擁壁工事をけちってしまっては、後々の後悔につながる可能性も…。

 

4.地盤が心配―「支持地盤」の深さによっては数百万円を覚悟?

地盤自体が緩い土地を気に入ってしまった場合はどうでしょうか。

土地を平らにするための「切土」「盛土」以外に、「地盤改良」の費用がさらに上積みされます。

傾斜地に家を建築する場合、支持地盤(硬い頑丈な地盤のこと。建築する家の重さにより深さが違う)にまで人工的な柱を打つなどの下地作りが必要です。

これもまた、ケースによっては数百万円かかるものも。

安全であってこその家、その建築に必要な費用ですからしっかりと見積もりを取ってください。

 

5.もしも家を売却するとなったとき―人工物での地盤改良では撤去費用が必要な場合も

一生ものの家ですから、手放すことは考えたくないのは当たり前です。

ですが、たとえば転勤やお子さまが巣立った後夫婦お二人には広くなってしまったなど、どうしてもの「手放し時」がくることも考えられます。
傾斜地での住宅建築にはつきものとも言える地盤改良ですが、これら「手放し時」の事も考えてじっくり検討してください。

平成15年に改正された「不動産鑑定評価基準」では、取引されようとしている土地に土壌汚染物や人工物が埋設されている場合には評価を下げなさいという指示がなされています。

セメント柱でしたら、地面に発がん物質である六価クロムが溶け出す可能性も指摘されています。

数十年も経ったら実質価値は土地だけ、その土地を売ろうとしたときに人工的な埋設物の撤去は売主の責任となっていますから、時にはむしろ赤字ということも今後は考えられるのです。

今ではさまざまな「天然もの(自然砕石なので人工物ではない)」で支持する工法も多くありますので、どうしてものときにはそれらから検討することをお勧めします。

 

【傾斜地建築のまとめ】

土地が安い、眺めが良いというポイントから人気の高い「傾斜地」。

その傾斜地に、自宅を建築するとなると(もちろんその土地の現在の状況次第ですが)数百万以上の下地作り費用がかかりそう、ということがわかって頂けたかと思います。

必要なものには必要なだけお金を使う、これが徹底できればそうそう恐れることもありません。

単に「そこが安いから」ということで選んでは後悔しますよ、というお話なのです。

安いならば、安いなりの意味がある、ということなのでしょうか…。

いずれにせよ、ご自宅の建築に関して「安全」の最終判断をするのは施主であるあなた自身ということは間違いのない事実です。

慌てることなく、しっかりと知識を身に着けてから望みたいのが、傾斜地への自宅建築です。

 

傾斜地で自宅を建築する際に見込んでおきたい出費のポイント

  1. 「急傾斜地崩壊危険区域」ではないか―自分でも事前に調べることができます
  2. ひな壇型の宅地開発済みの土地「宅地造成法改正」後の造成?―きちんと聞きましょう
  3. 傾斜地での建築に「擁壁」はつきもの―数十万~数百万のご用意を。
  4. 支持地盤の深さによっては数百万円を覚悟?―地盤改良
  5. 人工物での地盤改良では撤去費用が必要な場合も―土地を手放すにも赤字のケースすら

 

眺めの良い家を建築するために、安全を犠牲にするわけにはなりません。

これらの出費ポイントを充分念頭に入れた上で、傾斜地での建築を検討なさることをお勧めします。

もちろん、これらの問題もしっかりとした建築家やハウスメーカー、工務店が味方に付いてくれれば様々なアドバイスをくれることでしょう。

最初からあきらめてしまうのではなく、問題点をしっかり指摘し、解決策を明確に提示してくれる人たちとの出会いがあれば大丈夫。

傾斜地独特の地形を活かした家を建築したことのある建築家も数少なくはありません。

まずは「味方を見つける」のが最善です。

Facebookでシェア Twitterでシェア はてなブックマーク Google+でシェア
あういえを会員登録

関連記事