「設計と施工を分けて家を建てる」と言われて、その意味をパッと理解できる方は、かなり住宅について勉強をされているか、もしくは土木・建築関係のお仕事をされている方でしょう。設計と施工を分離する―設計者（建築家）と施工業者（工務店など）を別々にするというのは、イコール、全てを一か所で請け負うハウスメーカーには依頼しないということです。
建築家に設計図を引いてもらい、それに沿って工務店（建築業者）が家を建てる。この、設計施工を分離することのメリットには何が考えられるのでしょうか。
一括発注と比較しながら、この設計施工分離のメリットを見ていくことにします。
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１．【一括発注】ハウスメーカーや一部の工務店の場合
交渉事が苦手、もしくは時間的余裕が無く「お任せ」の部分をできるだけ多くしたい場合は、このハウスメーカーや、自ら注文住宅・建売住宅を行う工務店との間で交わす一括発注の契約方法が良いかもしれません。便利だということは、一方で家づくりの打合せ以外の部分を丸投げしているということです。現場でしかわかり得ない細かな事のチェックや注文がほぼ不可能であると言えます。
そして、更に注意したいのはハウスメーカーでは当然のこととして存在する「下請け業者」です。この下請け・孫請け業者が存在することは、それぞれに中間マージンが発生することは当然の事です。
これらの若干のデメリットに目をつぶっても、「時間がない」「交渉事が苦手」ならば、設計と施工の一括発注も充分に良い事もあり得ます。
２．【分離発注】完全オリジナルの家ができる
建築家に設計図を作成してもらい、「あなただけの家ができる」のが分離発注のメリットです。
打合せから、その家族ごとのライフスタイルやニーズに合わせたプランを立ててもらえるのは、ハウスメーカーのように一定の組み合わせからしか選べないという自由度の不足を大きく上回るポイントです。
２－１．見積もりに不明瞭な点がない
建材から設備までの一つひとつを一から選ぶため、自由度が高いのは先にも挙げたポイントの一側面です。床材ひとつを取っても、木材の種類から色合いまでを選択できるのですから、思い描くイメージに限りなく近くできるのが建築家へ依頼する家の最大の特徴です。もちろん予算に合わせて、代替品の提案を受ける事もあるでしょう。
そうして出来上がった設計図から部材をカウント（”拾い”と言います）し、建築材料にかかる必要な物を明確に示してもらえることは大きな安心材料になります。
２－２．建築に携わる業者へ工事にかかる見積もりを取ってくれる
建築家は、自分と息の合う建築業者とのパイプを複数持っています。そのため、設計図をもとに、それら業者へ工事にかかる費用を相見積もりの形で打診してくれます。
家のイメージを含む、その建て方自体を得意とする業者に相見積もりを取ってくれることは、工事に係る費用のコストダウンにつながります。
２－３．イメージ通りの家になるかどうかのチェックをしてくれる
更地にどんな家を建てようか―真っ白なキャンバスに最初の筆を置く所から関わってくれる建築家は、その家族のニーズや家に求めるイメージを（１００％とは言わないまでも）ほぼ理解してくれています。この、施主に寄り添った打合せ期間で、充分にその家への理解をし、実際に自分の手で設計図を引いた建築家ですから、工事期間の大事なタイミングごとに現地に足を運びます。
特に施主側が一番気になるのが、「思った通りになっているか」―つまり仕上げに近いタイミングには足しげくチェックに訪れます。施主が、現在の住まいから近い場所に住んでいる時には、仕上げに近くなると、見学という形で一緒にチェックを行うこともあります。
そこで最後の調整となる色合いや部材のテクスチャを改めて確認したり、造り付け家具の相談に専門家の知識を使って乗ってくれたりと、「至れり尽くせり」を実感できるのが分離発注の良い所といえます。専門家には出来上がりのイメージが頭の中に描けるのですが、いかんせん施主側は一生に一度か二度の家づくりです。
やはり現場を見なければわからないだろう、というのは建築家はよく知っています。そのあたりへの配慮をしてもらえるのも、施工業者との良い関係を持っている建築家に頼むことの大きなメリットです。
２－４．手抜きやミスを見逃さない
設計者と施工業者が別、ということは、工事へのチェックも厳しく行われるということです。一貫の、しかもあまりよろしくない業者に当たってしまえば、社内のなあなあな関係により手抜き工事や、部材を安価な物に勝手に切り替えられていたりといった可能性もなきにしもあらず、です。
設計者が現地に足を運ぶということは、何も仕上がりを見に行っているだけではありません。基礎工事の際には、強度確保のために正しい直径の鉄筋が、適正なピッチで入っているかといった「配筋検査」を行います。現場監督とともに、要所要所をチェックするのです。
この、手抜きやミスを見逃さない役目を果たしてくれるのも、建築家に頼む良い面なのです。
２－５．完成後の相談もスムーズ
引き渡しも終わり、実際に住み始めて気づくことも多くあるのが注文住宅です。人の手により一から作り上げられるものですから、いくら経験のある施工業者であっても、毎回スタイルの異なる家を建てるのであれば、悪意はなくとも気づかぬミスや、より工夫の余地のある部分が出てきてしまいます。
こういった場合も、建築家は施工業者との間に入り、相談役として動いてくれます。施主としても、せっかく建ててもらった家に不具合が生じたら、的確な処置を求めたいところ。こういったシーンでも、建築家は施工業者に適切な手直しを指示します。
イライラせず、しかも何がその問題の解決策となるのか正確に判断してもらえるのは、「住宅建築未経験者」にとってはとてもありがたいポイントとなるのではないでしょうか。
設計と施工の分離はメリットが大きい
特段、「時間がない」という大きな問題さえなければ、建築家に家を依頼し、施工業者を選定してもらう「分離発注」のメリットはかなり大きいと言えます。設計料を別に支払う必要があることから、「トータルの金額が予算オーバーしてしまうのでは」と思われるかもしれませんが、木材や設備の選び方から相談に乗ってもらえるため、むしろ削れるコストを見つけてもらえることも多いのです。
更には、丁寧な設計図、施工業者への見積もり、工事の際には重要なポイントでチェックに入ってくれる、建てた後の相談もしやすいといった、施主側に立った家づくりに全面協力してもらえるのです。
むしろ、「家についてはわからないことだらけ」「こだわりの家を建てたいけど後々が心配」という方こそ、建築家に依頼をし、設計と施工との分離をお勧めしたいと思います。施主にとって最大の理解者であり、その理解を形にしてくれる建築家は、実際の家づくりの場面でも逐一チェックを入れてくれるのです。一括発注による、（最悪の場合）なあなあで手抜きや勝手なコストダウンをされてしまうことほど怖いことはありません。
建築資材の厳選からチェック機能まで果たしてくれる「建築家＋施工業者」という分離発注は、「近いうちに家を考えようか」という方にこそ第一候補に挙げて頂きたい方法なのです。
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