マイホーム借上げ制度│空き家を活用・賃料保証の制度を6点から知る

2015/06/09

マイホームを手に入れたのはいいけれど、何らかの理由で売却を考えている―そういった方が増えてきています。特に多いのが、年齢を重ねたため家のサイズが夫婦二人(もしくはおひとり)に合わなくなったといったケースです。

予算も充分用意してしっかりと立派に作った家ならば、思い入れもひとしおでしょう。売却に寂しい思いをされるはずです。

自分が住まない家をそのままにしてくのももったいない話ですし、人の生活がそこになければ家の傷みは早いと言います。このまま空けておくのはもったいない…。仲介の不動産業者に依頼してもなかなか賃借人がつかず、いっそのこと売却を、というケースが多いのです。

こんな時に力になってくれそうなのが「マイホーム借上げ制度」です。

1.「マイホーム借上げ制度」とは

日本に住む50歳以上の方を対象に、既に空き家になっている家、もしくは空き家になる予定の家を一般社団法人移住・住みかえ支援機構(以下、JTI)が借上げしてくれるものです。

  • 終身型=利用者(家の持ち主)と共同生活者の両方が亡くなるまでの間終身で借上げ
  • 期間指定型=一定期間空き家になる場合、その期間だけ借上げ

借上げ賃料の受け取りスタートは、最初の転借人がついてから。その後再度空き家になっても、最低保証賃料は支払われます。借上げ賃料は、JTIがその地域の賃貸市場やその建物の状態から客観的に判断し決定します。

この借上げ賃料は、毎年見直されます。

2.貸し出す際に満たすべき条件

どんな建物でもこの制度を利用できる訳ではありません。借上げ・貸し出しをするために、安全性その他をきちんと確認する必要があります。

  • 共同所有の家は、登記簿に記載されている共有者全員が借上げに承諾していること
  • 土地についての所有権ないし適法な権利があること
  • 制度利用者以外の人が住んでいるときは、制度利用を申し込む時点で明け渡しが完了していること
  • 新耐震基準(1981年6月)以前に建築確認が申請された建物の場合、耐震診断を受けること
  • JTI指定の審査機関の建物診断を、利用者負担で受診すること
  • 一般住宅であること
  • 破産や民事再生の申し立てをしていないこと
  • 強制執行を受けていないこと
  • 固定資産税の滞納がなく、火災保険をかけてあること

―などです。

特殊な事情でもない限り、この制度を利用することができそうです。

3.実際の貸し出しは

主に子育て世代が家族で住むために転貸されます。物件の所在する場所や家の状況に応じ、賃料確保のため事業所への貸し出しとなるケースもあります。耐震補強等最低限のリフォームはこの制度の利用者が行います。

実際に住まう人には、畳や建具、クロスの張り替え、陳腐化しがちな流し台などの設備変更など、軽微なリフォームを認めなければなりません。

過失により壁に穴を開けたなど特別な場合を除き、実際に人が住むことにより起こる経年劣化については借りた人に負担は求めません。退去時のクリーニングが求められる程度です。

こうやって見ると、不動産業者に仲介をしてもらう賃貸住宅と大きく変わりはありません。

4.貸出までの手順

では、実際に相談から貸し出しに至るまでのプロセスを追っていきましょう。

  1. JTIに会員登録をする
  2. JTI協賛事業者所属のハウジングライフプランナーに相談
  3. 貸し出しできそうなら、建物の予備診断(予備家賃査定)を受ける
  4. 建物所有者(共同所有なら全ての人)の納得のもと、制度利用申込書を提出
  5. JTIの求める耐震診断と劣化診断を受ける(費用は制度利用者負担)
  6. 必要ならば耐震補強などの工事を実施(費用は制度利用者負担)
  7. JTI協賛の業者が入居者を募集
  8. 最初の賃借人が入居した段階から賃料が発生、受け取り開始

耐震診断や補強工事など、一見費用負担が大きいようにも見えますが、これは安全な家を貸し出すために一般の賃貸家屋でも同じことが行われます。この制度を利用するために、客観的にアドバイスがもらえることを考えれば、むしろ貸し出す方も安心できるのではないでしょうか。

5.一般の賃貸住宅とはどこが違うのか

ここまで見てみると、通常の賃貸住宅とどこが違うのかという疑問がわきます。

一番大きな違いは、

  • 賃料は一般の賃貸住宅と比較して安い
  • 終身で借上げるタイプを選べば、所有者が死亡するまで長期間、安定した収入となる
  • 一般の賃貸住宅では避けられがちな二世帯住宅でも、電気やガス、水道が独立、専用の入口・トイレ・バスルームがあり、住まうスペースが完全分離されているならばこの制度が利用可能

です。

一方で、まだ協賛事業者がない、もしくは少ないエリアがあることから、実際に家を貸し出すまでに時間がかかることがあります。

6.「住宅保護のセーフティーネット」の役割も

若い世代が住宅を取得したものの、残念なことにリストラや給料カットによる収入減を経験することは少なくありません。

また、夫婦二人の収入でローンを賄っていたけれど、どちらか一方が病気やケガで働けなくなり一時的にローンの支払いが困難になる場合もあるでしょう。

こういった時にも、このマイホーム借り上げ制度を利用できます。

一旦別の場所へ転居し、3年間という期限付きで入居者を募り、賃料をローン支払いに充てることで経済的に厳しい期間を乗り切る手段です。このケースですと、制度利用者の年齢が50歳以下でもOK。

3年の定期借家契約で入居者を募る事から、その間に経済状況を建てなおすことも可能でしょうし、「3年後にはあの家に戻ろう」という目標のもと様々な計画を練り直すことができます。この制度は同じJTIが取り扱いますが、「再起支援借上げ制度」という呼び方をします。

この「再起支援借上げ制度」は、

  • 築後10年目までの物件についての建物診断は簡略なもので可
  • 住宅金融公庫や住宅金融支援機構でのローンの場合は無条件で利用可

ですが、ローンの支払い方の見直しや抵当権の問題もあることから、相談事項は多岐にわたります。

あまり考えたくない事態ではありますが、病気やケガによる収入減は誰にでも起こり得ることです。慌てて家をたたき売りの価格で手放したり、自己破産で競売にかけられるような事態は避けたいものです。事態が改善できる見込みがあるのならば、まずは相談してみることをお勧めします。

若い世代でも、覚えておきたい制度ですね。

手放したくない家ならば積極的に利用したい「マイホーム借り上げ制度」

空き家問題がニュースを賑わしている現在、「使える家は有効に使う」ことが大切です。売るのもありですが、貸すのもありです。若い世代には「家は買うものではなく借りるもの」と考える動きも広がっています。

これを上手くマッチングさせ、良い家は使ってもらうというのがこの「マイホーム借上げ制度」の基本理念です。土地や家を持っている状態のまま、有効活用してくれる人に住んでもらえ、相続財産として次の代に残せるメリットは大きなものです。

この一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」は平成18年に設立されたまだまだ新しい組織です。

ですが、協賛社員はどこでも見聞きする会社ばかり。今後も協賛事業者は増えてゆくことでしょう。

住んでいない家、いずれ住まなくなるであろう家を所有しつつ活用してもらえる―。貸し手・借り手ともにWin-Winの関係を保ちながら、一般の賃貸住宅とは違った角度による空き家問題解消に寄与できる仕組みは、今後も注目です。

詳細は、https://www.jt-i.jp/ で。

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