「建築家」と「建築士」―資格は同じでも家に関わるスタンスは多岐に
家づくり関連の雑誌や書籍で「建築家」と書かれている人たち―。
この「建築家」とは、どういった人たちを指すのでしょうか。
「建築士」とどう違うの?といった疑問を抱かれている人も少なくないはずです。
これから家づくりをしたいと希望する方には、どうしても知っておいて頂きたいことがいくつかあります。
1、「建築士」こそが家づくりに直接かかわれる資格
「そもそも論」からひも解いてみましょう。
家を建てるために設計図を作成する人は、「建築士」です。
昭和25年に制定された「建築士法」により国家資格の位置づけとなりました。
建築に関わる設計と監理を行うための資格です。
最低限、この資格がなければ設計を行うことができないのです。
古くは大工さんがその役を担ってきましたが、建築の素材やスケールの多様化に応える必要がでてきたため、この資格制度が制定されました。
「一級建築士」「二級建築士」「木造建築士」の3種の資格があります。
設計を取り扱うことのできる規模などの差があるだけで、一般的な家屋を設計することに関しては「この資格でなくてはダメ」ということはありません。
2、工務店やハウスメーカーに属する建築士も
家づくりに関わる「設計・監理」を行うための国家資格として存在する建築士。
つまり、家を建てることのできる工務店やハウスメーカーに建築士が所属する、または協力会社として存在しているということになります。
「●●建築事務所」「●●スタジオ」などのように独立こそしていないけれど会社員として勤める建築士。
または、独立した事務所として存在しているけれど、工務店やハウスメーカーの仕事を主に請けている事務所。
そのような有資格者も多くいます。
3、「建築家」とは?
一方で、自ら名乗ればそれでOK、というのが「建築家」。
中には外観などのデザインだけを行う人も。
「建築家」たる代表が空間をデザインし、具体的な設計は社員に任せる―という事務所もあります。
ですが、お施主さんの生活にきちんと関わり、一人で設計から監理までトータルで請けてくれる建築家が主流。
一般住宅ではむしろそれこそがとても大事なのです。
しっかりと暮らし方を受け止め、それを形にするための仕事―それが建築家です。
もちろんそういったスタイルで設計してくれるのは、建築士という資格を持っていてこそできることです。
4、建築士の中に建築家が存在しているのが「正常」
建築士の資格を持たないものが、設計を行うことは違法です。
単にデザインだけを行う「建築家」がおり、それを実際に図面に起こすのを「建築士」が行うというスタイルのスタジオもありますが、それであってもやはり建築士という存在があってこそ。
何らかの図面をご覧になったことがあるでしょうか。
図面の下部、隅に「●●一級建築士事務所」などの署名が入っています。
国や県に認められた建築士が所属する事務所であることの証です。
その建築家本人が有資格者かどうかは、その事務所のHPなどで調べることができます。
もしくは、その事務所が公共工事など更に厳密に資格を問われる仕事を請けられる状況にあれば、自治体の土木事務所などへ届けを出しています。
「競争入札参加資格」などのキーワードで自治体HPを検索すれば社名か有資格者の名前が出てくるはずです。
国家資格を有しない建築家―いないわけではありませんが、デザインだけをしてもらう程の大規模な建物でない限り、建築士=建築家であることが自然です。
5、日本建築家協会が推進する「建築家資格制度」も
約30万人以上いると言われる一級建築士。
ですが、第一線で家づくりに携わっているのは約2割というお話です。
その他の人たちはどこで何をしているのでしょうか。
設備や構造という設計の一部分に携わるのみであったり、公務員として働いていたりなど、トータルで家づくりに関わる人は少数なのです。
このため、本当に実績のある建築士≒建築家を見分けるための仕組みとして、日本建築家協会が「建築家資格制度」をスタートさせました。
最終的には国家制度実現にまで発展させる考えです。
これが実現すれば、「建築士の資格は持っているけど、ペーパードライバー」のような人に当たらなくて済むことにもなりそうです。
この制度は2003年にスタートしたばかり。今後の進展に注目です。
今すぐでなくても「いずれは建築家に家を頼みたい」と考えている方は、認定建築家のページをチェックしておくのも良いかもしれません。
http://www.jia.or.jp/qualify/qualif_arch/nintei/index.htm#
6、今現在は、やはり「ポートフォリオ」「口コミ」充実の建築家から探すべき
先に触れた登録建築家は、全国で約3000人。
希望の建築家に出会うのは至難の業かもしれません。
そのため、やはり
- センスに関してはポートフォリオ(写真集など)を見る
- 口コミや知人などからの評判を聞く
- 実際に会ってみて、感覚の合う人かどうかを確認する
ことがとても大事です。
工務店やハウスメーカー所属の建築士でなく、あえて建築家に依頼するということは、やはり「どこにもない自分のための家」をつくるためであるはずです。
お施主さんのために本当に必要な物はなにか、それを実現するためには何が必要でどんな手順を踏まなくてはならないのか―。
建築家も真剣に取り組んでくれるでしょう。
施主側・建築家側の双方が、それらを充分議論できる相手であることを最重要視するべきだと思うのです。
7、建築家だからこそ「人生観にも踏み込む」ことがある
家族により、生活の仕方はさまざまです。
人生観までも家に投影しなくてはならないこともあるでしょう。
例えば、「その家に一番長く住まわなくてはならないのはだれか」と考えた時、一番環境の良い部屋はご夫婦の部屋にする、という選択をされるご家庭もあるでしょう。
「夫婦共働きで夜は寝るだけだから」とご夫婦の寝室は家の一番北側の決して環境の良くない位置に持って行くお考えのご家庭もあるでしょう。
そういった、大きく言えば「人生観の表れ」とも言える家づくりに関して、お施主さんの言いなりになることもできます。
ですが、やはり作品たる家がそのご家庭に一番マッチしたものとなるよう、建築家も知恵を絞ります。
「その家庭らしさ」を引き出すために、聞きづらいことも聞かなくてはならないのが建築家。
家族間であっても考え方に違いがある場合も往々にしてありますから、更に他人である建築家。
建てた作品のセンスだけでなく、個々の家庭の考え方を充分に受け止めるだけの余裕ある人と出会いたいところです。
建築家ならではの価値観もあることでしょう。
うまく「肌の合う」人と出会うことが先決です。
まとめ
建築家と建築士、実はほぼ同義語であることがお分かり頂けたかと思います。
むしろ、同義語でなければいい家をつくることはできないかもしれません。
デザインだけに走らない、本当に「あなたの将来までも考えつくした」いい家を求めるのならば、場数を踏んだいい建築士である必要があるのです。
どうぞ、この「あういえを」で多くの作品を見てください。
そして、センスと価値観の合う、あなたにとって「いい建築家」をリサーチし続けてください。
一生ものの家、焦る必要はないでしょう。
きちんと心のキャッチボールのできる建築家との出会いを探し、その時を待っていただければと思います。
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