生田の家 -築36年中古プレハブ住宅のリノベーションー
神奈川県 戸建住宅 ~150平米 1000万円台
祖父母の土地を引き継いだ施主夫婦は、両親との二世帯住宅を希望されました。
ご要望として
・おじいさまが大切にしていた庭の面影を既存活用しながら残すこと
・高齢化した将来を考えて平屋とすること
・日常生活と来客を考慮して3台分の駐車スペースを確保すること(その内2台は屋根付き)の3点です。
建物は、平屋で必要機能を満足させるため、約100坪になる敷地形状に合わせて道路・敷地境界側の建物外形を決定し、石庭を囲むようにコの字に配しました。そして庭を中心とした建物の一体感を出すために、一続きの屋根で覆っています。おじいさまが大切にしていた石庭は、二世帯がお互いの気配を感じながらも距離を保ち、日々眺める、建物の中心であり緩衝帯となる外部空間としました。
建物の顔となる道路境界側は、外部・半外部空間、素材や構成に変化をつけて、場所の性格付けと領域をデザインしています。道路寄りの建物壁は、開口をあえて設けず、またコンクリートという素材によって心理的な塀を兼ね、庭に開いたオープンな暮らしを周囲の視線から守っています。このコンクリートの壁は、鈴鹿山脈から吹き降ろす鈴鹿おろしの突風からの被害を防ぐための役割も果たしています。
要望のあった2台分の屋根付き駐車スペースは、後付のカーポートではなく、最大で奥行き6mを超える深い軒の空間として建物と一体にデザインし、玄関までのアプローチを兼ねました。雨天時のみならず、三重県の中でも積雪量の多い地域であるため、この軒下空間は日々の暮らしで重宝されています。
道路側に門扉は設けず、深い軒による半外部空間と、道路寄りに設置した表札とインターフォンにより、玄関までの心理的な距離と縄張りとしての領域を演出しています。
内部は、エントランスやリビング、水廻りを共用空間として使う完全同居型のため、二世帯生活でお互いの距離感をその時々で選択できるようにプランで配慮しました。
コの字の中央に二世帯で共有するLDKと浴室・洗面室といった共用空間を配し、それら共用空間を挟むように親世帯と子世帯のゾーンをそれぞれ配しています。家事労働の中心となる子世帯の室はLDKとの回遊性を持たせ、片や親世帯の個室は玄関ホールを介して配置することで同じ家の中でも離れのような距離感を生み出し、完全同居型でありながら生活動線を緩やかに分離可能としています。