acubens/高台で、基本は平屋だけど 潜望鏡のように2階に上がると富士山が拝めるかたちを考える。
栃木県 戸建住宅
道路と敷地が1.2m程度高低差のある敷地での計画です。
もともと広い敷地であった場所を南北に区分けし、北側の敷地で建物を計画することになりました。
できる限りカーテンなどに頼らず開放的に過ごせる方法を検討したいが、日中過ごす際に外からの視線はやはり気になるとの要望です。
南側の敷地は将来住宅などの建築の可能性があることを考慮すると、コの字型のコートハウス(中庭型住宅)のような平面計画が打ち合わせの中で見えてきました。
コの字型のプランは要望的には向いている様に思うのですが、コの字の両端部が行き止まりとなり、動線が滞ることが多いところが悩みです(施主の、というより設計者の個人的悩みに近いのですが)。
人が端から端まで歩くことができる動線をつくることによって、家の端まで血管が行き渡り、人が巡回することで隅まで血が通う様な感覚でプランニングをした場合に、このコの字型プラン問題はいつも突き当たる課題となるのですが、今回は両端にそれぞれ階段を設けることで1階2階を通した回遊動線を計画しました。
つまり、この家には階段が2つ存在します。
とはいえ、もともと平屋の平面計画要望であったため2階は子供部屋のみなので、本来階段2つはオーバースペックなのですが、比較的置き場に悩む手持ちの荷物の収納や将来の収納の解決が必要だったので、ロフトを計画する話があり、これにサブの階段を用いた動線計画を絡めて立体的に回遊できるかたちにしました。
ロフトの天井高は、大人もぐるぐると、というわけにはいきませんが、双子の男の子が上下左右ところ狭しと駆け回る住宅が出来上がり、友達を呼んで大変な運動量となっている様です。
ある意味これはこの住宅の本質的な部分となっているので、まさしく正しい使われ方で設計者としても嬉しい限りです。
男の子が上の階を通過したと思ったら、同じ容姿の男の子が下の階を通過し、さながらデジャヴの様な不思議な光景を体感することになりました。
大人のためにはコの字の端部を平面的に1階レベルで繋ぐウッドデッキを用意しました。
端部から端部へと屋外を通じてショートカットできる様にしたのですが、入居後に家族の一員に加入したワンちゃんにとって、このウッドデッキは小さなドッグランとなって想定外の活躍をしている様です。
この中庭は、採光、通風、プライバシーの確保などの他に、単純に眺める空間としても機能しており、当たり前なのですが1つの庭を南、東、北の三方向から楽しむことができます。
折角なので浴室も中庭側に向けて配置し、緑を眺めながら湯船に浸かることができる間取りになっています。
外部の仕上げはガルバリウム鋼板の塊として単純な形状を基調としながら、ロフト部分の高さに窓を連続して配置し、できる限り整った形になる様に注意しました。
硬い金属の外壁に対して、内部空間は外周以外で針葉樹合板を多用し、質感のある内装としています。
ロフト部分に設けた連続した窓による上方向からの採光と、上下通風に配慮した断面の計画、カーテンにあまり頼らずに窓を開放できる中庭の配置によって過ごしやすい環境を考えた住宅です。
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