「和モダンな家」―イメージ派も機能派も満足の「建築家と作る家」

和モダンの家 建築家

設計:坂口 弘樹さん

「和モダンな家」と言う言葉に触れる機会が増えています。

さて、あなたにとっての「和モダンな家」とはどんなイメージでしょうか。定義が曖昧であるだけに、建築家や自由設計を謳う工務店と相談する際に自分の持つイメージをどう伝えればよいのか迷うこともあるでしょう。

かなり強引かもしれませんが、「イメージ型」と「機能型」で分類してみるのはいかがでしょう。

【イメージ派】建築関連の雑誌や、気になる古民家カフェなど自分で撮った写真を利用する

イメージ型の場合、写真であなたの思い描く「和モダン」を伝えれば事足りることも多いはずです。イメージ型ならば、和モダン=「レトロな雰囲気」「昭和テイストを取り入れて」などの言葉でも粗方イメージの擦り合わせができるかもしれません。

和洋折衷とも言うのでしょうか、新築の今風の家でも壁を漆喰仕上げにしたり、照明(ペンダント型)のシェードを和紙製のものにしたり、小物収納のために和ダンスを探して来たりと、ポイントごとに「和」を感じさせるものを配置することでバランスを取る事が必要です。

室内の色合いやそれらポイントとなる部分との相性は、建築家ならずとも建築家お抱えのインテリアコーディネーターとも相談ができるかもしれません。今様の家でありながらも和を感じさせることは、さほどハードルの高いことではありません。

「おばあちゃんの代から引き継いだ雰囲気のいい家具がある」といった明確なアイコンが存在すれば相談もスムーズですが、そうではない場合は、家づくりに関する雑誌を参考にするとよいですね。

また、古民家カフェのような「和」を感じさせる場所へ出向いた際に、「こういった雰囲気や仕上げが好き」というポイントをカメラに収めてくると、思い描くイメージを伝えやすくなります。和モダンの家を、と考え始めた時から、そのような画像収集を始めてください。画像は多ければ多いほど良いでしょう。その多数の画像の中から、より自分の目指すイメージの写真を厳選できるからです。

【機能派】自分たちの目指す暮らし方に合わせてオーダーメイド

イメージのみならず、機能として「和」を取り入れるときは、専門家である建築家の手を借りなければなりません。

最近注目されてきているのが、土間(三和土とも表記されます)や縁側、リビングの一部を和室として小上がりのように仕上げるものです。古くからの日本建築では当たり前であった「段差」ですが、住宅の洋風化に伴い、この段差は生活する上で面倒という理由で避けられるようになりました。

【土間】

これまで排除された時期のあるこの段差を敢えて取り入れ、土間に自転車や趣味の物、長期保存できる食品を収納する場所にしたりというデザインの仕方もあるのです。家庭菜園で採れたての野菜を運び込んだり、週末に食品のまとめ買いをし一旦保管するにも良いでしょう。

また、ご自分で漬物を漬けたりするときにはこの土間が便利です。

【小上がりの和室】

リビングの隅に小上がり風の和室を設ければ、おじいちゃん・おばあちゃんなどご高齢の方がお見えの際にも家族と離れることなく腰かけたり、疲れればそのままその和室に横になったりと、機能面でメリットを得られます。

ご夫婦がお若い世帯ならば、リビングダイニングの一部の和室に赤ちゃんを寝かせ、目の届く範囲内でお料理ができたりと、これもまた機能的です。

【縁側】

縁側はどうでしょうか。洋風の家で言えばウッドデッキのような使い方ができます。ご近所さんが立ち寄ってくれた時に、わざわざ上がってもらうまでもないけれど、立ち話も何だし…といったよくあるシーンで活躍してくれます。お天気が良ければそこで自分の息抜きにお茶を飲んだりという、リラックスの場所にもなってくれるはずです。

さて、ここまでで挙げた「機能面での和モダンの家」のいくつかのポイントで気づかれたところはありますか?

そうです。

一時期は一般住宅では嫌われてしまった段差を敢えて取り入れることで、今様の家の機能性を上げるという点です。

家の中で高さに差があるということは、その場所その場所に適した設計が必要であるということです。その場所を、どんな人が、どのようなケースで用いるのかを考えながら、適した高さを導き出さなければなりません。

更には「和モダン」=和と洋を程よくブレンドするというデザインセンスが必要となるのです。

住宅を設計するに当たり、一番に行うのが「ゾーニング」という作業です。どこに何を配置すれば一番効率が良いか、更にそこにご家族の要望を取り入れながら慎重に臨まなければならない段階なのです。家事動線を含み、ここで充分に考えておかなければ使い勝手の良い家にはなりません。敢えて段差を取り入れるのですから、安直にイメージだけで進めてはならないのです。

また、その家の住まい手が将来年齢を重ねた時に、その段差が辛くなってしまった際にリフォームしやすいよう、先を見越した家づくりをしなければなりません。

家はアクセサリーではありません。長い間ローンを支払いながら、そこで生活をする場所です。使い勝手と長期的視点があってこそ、満足できる一棟が完成するのです。

「和モダン」と検索すると、多くの画像がヒットします。そのいずれもが、現代の暮らし方と「和」を上手く融合させたものです。それぞれのデザインに全て意味があります。その意味、つまり機能については、建築家の知恵と工夫が必要なのです。

ある若手建築家がこう言いました。

もしかしたら、一時は否定されかけた段差(日本古来の住宅)を見直さなければならないかもしれない。洋風な暮らしとはいっても、欧米人は靴のまま家に入る。日本人は必ず靴を脱ぐ。その境界線をあえて緩やかにつなぐことができれば、本当の暮らしやすさが手に入るかもしれない

―確かにそうかもしれません。

機能美としての「和モダン」は、こういった問いの中から生まれるものです。イメージ型の和モダンの家を考えておられる方も、この機能型の和モダンの家を考えてみてはいかがでしょうか。折角建築家と一から描く我が家です。機能面で、これは、と思える古式ゆかしきもの(土間や縁側、和室)があれば、積極的に取り入れてみてください。より豊かで、使いやすい家となることでしょう。

自然素材の使用はもちろんのこと、今改めて見直されている日本家屋風の和モダンの家。生活を便利にする面でも積極的に候補に入れてもよさそうです。

イメージ派も機能派も、大切なのはセンス

和モダンの家を―イメージ派であっても機能派であっても、そのバランスはとても難しいものです。外側だけ・内装だけを一部和風にするという手法もあれば、機能から考える家もありました。仮に和モダン=和洋折衷と定義すれば、「より和に」「より洋風に」という印象のバランス感覚も必要です。センスを見込んだ建築家と出会わなければ、思い描く和モダンの家は実現しないでしょう。

どうぞ、あういえをの作品集の中から、「これは」と思えるイメージの家を探し出してください。

そして、その建築家に気軽に相談されてみてはいかがでしょうか。定義の曖昧な「和モダンの家」は、イメージの擦り合わせはむずかしいかもしれません。ですが一方では、「和モダンの家こそオーダーメイドたる注文住宅が向いている」とも言えるのです。

あなたとあなたのご家族らしい、手作りの家が実現できますように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました