29 Dec 2014
設計者:山本嘉寛さん
近年、空き家の増加が一つの社会問題としてニュースでも取り上げられるようになってきました。
また、それら空き家の再生に真正面から取り組む動きも報道され始めています。
なぜこのような状態が見られるようになったのでしょうか。
これは何も、地方の、いわゆる「田舎」と呼ばれる場所に限った事ではありません。
利便性の高いエリアでも多くみられる状態です。
では、このような問題が起こり始めている原因と、それを解消する意義、新築住宅を建てることとの比較をしてみたいと思います。
1.なぜ「空き家問題」がクローズアップされているのか
これはもう、既に皆様お気づきの通り「少子高齢化」に伴って生じている事柄です。
家というものは「結婚し、子どもを育て、巣立たせる場所」という事ができます。
そして、当然のことながら、子どもたちは独立し、結婚し、自分たちの家を構えます。
そうすると、子どもたちを巣立たせた親世帯は夫婦二人となり、そこで余生を送ることになります。
単純に考えた時、子どもの数÷2(夫婦となる)=新婚世帯分だけ家が必要、という公式が成り立って来ました。
ですが、親世帯がそのまま空き家になることも珍しくなくなりました。
体が不自由になったなどの問題から、サービス付き高齢者向け住宅(通称・サ高住)への住み替えや入院を余儀なくされることも多いのです。
子どもを頼ろうにも、頼れないケースも多くなっています。
そのため、その親世帯が住んでいた家はそのまま空き家になってしまいます。
この空き家の問題は、世帯ごとにそれぞれ家を購入するという「家族の在り方」が生み出してしまった問題である、という側面も持ち合わせているのです。
2.人口の減少=必要な戸数の減少
人口の自然減(生まれる子供の数<亡くなる人の数)により、世帯という単位でカウントされる数字が減少するのは当然の事です。
この、世帯という単位こそが、家(ないしはマンションの部屋)の数に大きな影響を与えています。
今、既に築何十年と経過している家は、日本の人口が一番多い頃に建てられたもののはずです。
とてもとても大きなお皿(家の数≒世帯数)が存在しますが、そこに盛られるお料理の分量(現在の世帯数)はぐっと減っている、という例えがぴったりくるでしょうか。
お皿は大きいのに、お料理はポツポツと、小ぢんまり少量ずつ盛られている、というイメージです。
お皿にはとても大きな隙間が空いています。
今現在の空き家問題で一番に挙げられる原因がこの「人口の減少」です。
3.利便性の高い所なのに「売れない土地・家」
特に都市部で多く見られることに、「利便性の高い良い土地があるのに売れない」という問題です。
これらは主に、路地に面した日本の昔ながらの住宅であるはずです。
不動産仲介業者のチラシやHPをみて「ここ安い!」と思った時は、隅々まできちんと読んでください。
「再建築不可」という言葉があるかもしれません。
空き家の再生ができないこともあるのです。
今現在の建築基準法で建築が認められていない(敷地が道路に接していない・幅員2メートル未満の道路に接道)土地である事から、今ある古い家を取り壊して、再度建てなおすことができないのです。
建築確認申請が必要となるような大掛かりなリフォーム(再生)さえ不可能なこともあるでしょう。
このような「土地は良いけど家がどうにも…」という場合、やはり買い手はつきません。
親世帯から相続した人も、この問題には頭を悩ませます。
「売りたいのに売れない、でも税金はかかる…」というものです。
そのため、土地・家すべてを放棄してしまうケースもあるのです。
当然、家は手入れをされずにそのまま朽ち果てるに任せられています。
4.土地を活かし家を再生したいなら、ご近所の力が必要
「再建築不可」と明記されている土地でも、気に入ったのであれば活かす方法はいくつかあります。
その代表的なものが「ご近所の力を借りる」という方法です。
新たに家を建て替えるに必要な条件(接道)をクリアするために、気に入った土地と地続きのお隣の土地を買うことはできないでしょうか。
その土地の持ち主にも相談を持ちかけ、お隣の土地を売る予定はないか聞いてもらうのです。
親の世代からのお付き合いが密であれば、そういった相談も可能な事があります。
もちろん、仲介業者に「家を建て直すならばどのような条件が必要か」という点を確認しておくことが求められます。
その仲介業者が、そのエリアに顔が広い場合は、お隣への相談も引き受けてくれるかもしれません。
法を犯してまで建て替えてしまうと、取り壊し命令が出され解体を余儀なくされます。
そういった無理を避けるためにも、再建築・再生できるだけの条件を土地の面でクリアしなければなりません。
5.「再建築不可」ではない場合―地の利を生かしながら、空洞化回避の一端を担える
気に入った土地が見つかったのはいいけれど、確認申請を行う必要のある大掛かりなリフォームができないこともあり得ます。
各種の制限をうまくかわしながらリフォームや再生ができるのであれば、利便性をメインに考えた家づくりができるはずです。
そのエリアで目立つ家の老朽化による危険を回避するため、市民としてできることの一端を担うこともできます。
空き家が多いことから生じる、治安の悪化にも市民として備えることができるでしょう。
6.その土地を愛するがゆえに「住み続ける」という選択をする人もいる=「コミュニティ力」
人口のピークは2004年の1億2779万人でした。
戦後の高度成長期には、ニーズを満たすための「郊外型住宅団地」も一気に増加。
今ではその郊外の住宅団地にも空き家が目立ち始めています。
「そもそも山であったところは山にもどしてやってもいいのではないか」とする専門家もいます。
それだけ、人口の減少は大きな問題として今後私たちを襲ってくることが解っているのです。
今回、前提として考えているのは「利便性の高いまちなかエリアの空き家」です。
まちなかで、交通の面でも、買い物や通学にもよく、気に入った土地があるのならば是非その土地を活かす方法を専門家と考えてください。
東京都豊島区も、「消滅可能性都市」としてその名を挙げられたことから、市民と共に「住み続けたい土地」を目指しリノベーションスクールを開催しました。
改めてその土地の良さを見直し、どこにテコ入れすれば住みやすくなるのか―。
建物ひとつひとつの問題のみならず、エリア全体のことを住民自身が考えることが必要であることをこの動きは指しています。
そこにあるのは、古くから連綿と続く「コミュニティ」。
ヒトがヒトとして生活するために欠かせない、人同士のつながりが再認識され始めているということなのです。
郊外の真新しい分譲団地に、新築の家を建てることも素敵な事です。
ですが、人口が減り続け、今後コンパクトに住まわなくてはならなくなるであろう日本においては、既にある建物を使えるだけ使いコミュニティを維持し続けることも「宿題」として残されています。
気が付けば、家の周りに生きていくのに必要なインフラ・商店もなくなっていた―このような問題に行きついてしまわないよう、まちなかの古い家を再生してお気に入りの土地に住み続けることで回避することができるかもしれません。
空き家の再生が日本の未来を救う
活かせる空き家がまちなかにあるのに、未だに山を切り開いて住宅団地の開発は続いています。
一時期の「大団地」ではないにしろ、「プチ開発」はまだまだ行われています。
せっかくの家の購入ですから、真新しい場所に居を構えたいと言う心理も当然の事です。
ですが、賢い消費者・賢い市民として考えなくてはならないのは、「その住宅団地の開発、本当に必要ですか」ということ。
- なぜ「空き家問題」がクローズアップされているのか
子どもがそれぞれ家を建てるという文化が空き家を生んでいる側面も。 - 人口の減少=必要な戸数の減少
人が減れば、当然求められる家の数も減る。 - 利便性の高い所なのに「売れない土地・家」
現在の建築法に則した土地でないばかりに、建て直しができず、売れない土地もある - 土地を活かし家を再生したいなら、ご近所の力が必要
それでもその土地を活かしたいのなら、色々な知恵を授けてくれる専門家やご近所の力が必要 - 「再建築不可」ではない場合―地の利を生かしながら、空洞化回避の一端を担える
利便性を求めた生活をスタートするには、空き家の再生がベストなことも - その土地を愛するがゆえに「住み続ける」という選択をする人もいる=「コミュニティ力」
古い街並みに価値を見出し、あえてそこに住み続ける工夫を模索している人たちもいる
ご近所とのつながりがあればこそ、子育てにも安心して取り組めることでしょう。
新築の家も素敵です。
ですが、まちなかの利便性の高い土地に見つかる空き家の再生もまた、素敵な選択です。






